税務調査が激減している

国税庁のまとめによると平成24事務年度(平成24年7月〜平成25年6月)に実施した税務調査は法人税と所得税で約3割弱、相続税調査も1割減ったらしい。

これは国税通則法の改正により今年1月から税務調査の手続きが大幅に見直され、調査官たちが対応に追われていることが原因だ。

まず、調査の事前通知だ。
納税者と税理士に調査の開始日時、場所、目的、対象税目、対象期間等々11項目を通知することになったのだ。
税務署の調査官から税務調査の事前通知の電話が入ると、この11項目を延々と話し始めるのだ。
「分かった、もういいよ」と途中でさえぎると、税務署員が申し訳なさそうに「お願いですから最後まで聞いてください」と。

中身は今までとほとんど変わりがない。
11項目を全部聞いても仕方がないのだ。
忙しいときに延々と聞かされる身にもなってみろ!
営業妨害とさえ思えることがある。
これと同じことを納税者にも通知をしているわけだ。
いきなり税務署から電話が入って事前通知を機械的に話されても、納税者にとっては、チンプンカンプンだろうがおかまいなしだ。
こういうのをコンプライアンス馬鹿というのだ。
最近こういう誰も喜ばない管理と自己保身のための仕事ばかりが増えている。

そして調査が一通り済んで問題点の検討に入り、修正申告に応じなければ、更正処分ということになるのだが、この更正処分を行う場合は、税務署は「理由付記」をしなければならなくなった。

うちの事務所では、今年は相続税の調査で一度、修正申告の勧奨を拒否した。
更正処分するならその理由を示せ。
ということでどんな「理由付記」をしてくるのか楽しみに待っていた。

が、いつまでたっても更正処分して来ない。
やっとのことで出てきた「理由付記」の内容の杜撰なこと。
今まで調査官はまともに理由付記を記載したことがないのだ。
日本の納税者があまりにもおとなしいので、処分の理由が分からなくても、文句も言わず追徴に応じていたからだ。

税務調査が停滞している原因にこの「理由付記」をしなければならなくなったことが大きい。

今回、うちの事務所では、更正処分に対して「理由付記」の不備を理由に不服申立しようと思っている。

ま、こういうこともあったけれど、他の今年の相続税の税務調査は手続き以外の臨宅調査(納税者の自宅での実地調査)はあっさりしていた。
印象に残る税務調査がないのだ。
調査はみな午前中で、あっけないほど簡単に終わってしまった。
調査官が「先生には、申告に際してよく検討されて提出していただいておりますので、税務調査はこれで区切りとします」と言って帰って行くと、お客さんは大喜び。
まるでうちの事務所の営業をしてくれているのかとさえ思ってしまう。
こういう性善説にたった調査をすれば、今までより格段に税務調査の件数を上げていくことができる。

税務署の諸君!
納税者を疑ってかかるから能率が悪いのだ。
納税者を信用してサッサと調査をしてサッサと帰る。
税務調査の件数が激減したことへの対策はこれに尽きる。
性悪説から性善説に立った税務調査への転換だ。
人を疑っていてはキリがない。
猜疑心は諸悪の根源だ。