親の影響

東京マラソンを走った後、東京に住んでいる私の息子(長男)を訪ねることになっていた。
自営業者となっている息子の確定申告を手伝ってやる約束だったのだ。
マラソンを走った後だったので電車の乗り継ぎで駅の構内の階段の昇り降りはきつかった。
脚がバッキバキに凝っているので手すりにしがみつきながらの階段だった。
まるで老人だ。
東京に住んでいる息子は車を持っていないので「疲れているから車で迎えに来い」とは言えないし、タクシーに乗るのはもったいない。

息子の確定申告の手伝いのことだが、領収書などの保存が苦手みたいだ。
儲かっているのか、いないのかさえ、さっぱり分からないらしい。
ま、食っているので何とかなっているのだろう、と気楽に確定申告の手伝いは終わった。
息子は私に似て数字が苦手だ。
税理士である私も息子の確定申告に関心がない。
「税金のことは気にせず、仕事に集中しろ」と言っておいた。

私の息子は会社から独立して東京で自営業者として開業したが、のんきな性格なので果たして食っていけるのかと心配するのが親心。
と思うだろ。
が、正直なところ私は心配したことはない。
私は息子が小さい頃から「群れるな、はぐれ鳥になれ」と言い続けてきたから、
いまこうして「はぐれ鳥」になっている息子に「よくやった」と言ってやりたい。食っていけるかどうかは関係ない。
そんなことより大事なことは体力と気力だ。
体力と気力さえあれば何とでもなる。
健康に気をつけて元気でいて欲しい。
ただそれだけだ。
そのためには歩くか走ることを日常の生活習慣にすることだ。

しかし、息子の仕事は一日中、パソコンの前に座ってやる仕事なので健康が保てるかが心配だった。
だから3年前、「運動不足だろ、おまえも走れ」とモンゴルマラソンに誘い出し、一緒にモンゴルの草原を走ったことがある。
マラソンにハマって毎日少しずつでも走るようになればいいが、との思いで勧めたのだ。
それ以来、走っている様子がないのでマラソンにはハマらなかったな。
と思っていた。ところが意外にも息子からマラソンの話をしてくる。
自分もマラソン大会のエントリーをしたというのだ。
「やっと走る気になってくれたか」と嬉しかった。

強制することなく自分からハマっていくように仕向けたのは、マラソン以外にはパソコンのMacだ。
私がMacにハマったとき、当時2歳の息子にも使わせたら、息子は完璧にMacに
ハマった。
それが嵩じて美大に行き、今ではデザインの仕事で張り切っている。
Macといい、はぐれ鳥といい、マラソンといい、私はいいものを息子にハメてやった。

しかし、もう一人の息子(次男)は「自分の趣味を押し付けないでくれよな」などとぬかして言うことを聞かない。
それでもしっかり“はぐれ鳥”にはなっている。