勤続30年

先月、税理士会から勤続30年の表彰をするから出席しないかと葉書が来た。
開業してからもう30年になるのかぁ、私は税理士会の会合にはほとんど出席した
ことがない。
自他ともに認める税理士界の“はぐれ鳥”だ。
「たまには会合に出て来い」という警告書をもらった。
不良会員のこの俺を表彰だと?
会場は帝国ホテル、記念品も出るらしい。
「そ~か、帝国ホテルちゅうとこに行ってこましたろやないか。
どんな記念品が出るかも楽しみだし……」
それにこの私が表彰されることなど後にも先にも今回だけだ、ということで初めて会合に出席した。

税理士会の総会は決算報告やら予算案の報告などでちっとも面白くなかった。
表彰式は誰か知らん税理士が代表で表彰状を受け取り、あとは「以下、同文!」で
終わった。
私はその他大勢の中に埋没して表彰式は終了した。
なんせ1400人以上も表彰を受ける税理士がおったのだから、しゃあないわなぁ~。
記念品って、なんやろ。
夫婦ペアでハワイ旅行?
などと期待していたのだが、はっきり言ってショボかった。
チープな万年筆とボールペンセットだった。

ま、そんなことはともかく、同輩の税理士たちと、
「こんなストレスの多い仕事をしながら、よくもくたばらずに30年間も続けて来られたものだなぁ」
などとねぎらい合った。
30年も続けることができたということは、すなわちそれが天職ということだ。
私は若い頃、上司と喧嘩ばかりして辞表を叩き付け、10数回も転職を繰り返した。
私は社会の落伍者だった。
路上生活も覚悟せねばあかん。
その頃の私の人生設計の最終局面は“野垂れ死に”だった。
誰に看取られることもなく、ひっそりと死んで行こう、それもまたよし、と思っていたのだ。
まさか私のような短気で飽きっぽく社会に順応できない者が、30年も同じ仕事を
続けるとは思いもよらなかった。
独立開業した後も職業選択を誤ったと思っていたくらいなのだから。

それが最近、ど~ゆ~わけか仕事が面白くなってきた。
こうなったら仕事を道楽にしてこましたろ、寸暇を惜しんで勉強してこましたろ、こましてこましてこましまくったろ、と思っている今日この頃なのだ。
考えてみれば仕事が道楽になる、というのが人生で一番幸せなことかも知れない。昨年まで10年間も週休三日で楽をしたせいで、いままで頑張らなかった分、たっぷり余力が残っている。
それにわずかな国民年金ではとても食ってはいけないし、私は貧乏だから死ぬまで働くしかない。
図らずも何もかもが「死ぬまで働け」と仕向けられている。
これは天のシナリオか?
覚悟は決まった。