死亡消費税

相続税の課税根拠は何か。
いろいろ説はある。
その中のひとつが「還元所得税説」だ。
亡くなった人が多額の資産を残せたのは生前に所得税を納めていなかったに違いない。
だから相続をきっかけに過去の所得税の取り漏れを精算をしようという考え方だ。資産家がこれを聞いたら怒るだろうなぁ。
「そんなに財産が残った、ちゅうことは生前に所得税を払っとらんかったんやろ」と言われておるのだ。

土地持ち資産家の場合、毎年多額の固定資産税を払っている。
死んだらまた相続税を払わされるのだからたまらない。
税金の二重取りじゃないか、と言う人さえいるのに。
「還元所得税説」みたいな考え方で相続税を取られたら、踏んだり蹴ったりだわな。

それともう一つ、相続税は消費税の補完税という理屈を唱える人もいる。
消費しなかったからこそ財産として残ったのだから消費税の取り漏れが生じている。
そこに着目して消費税の補完税として課税してもいいじゃないか、という理屈だ。そうすれば低所得者に厳しい逆進性という不満も同時に解消できる。
この理屈を徹底すると「死亡消費税」となる。

この死亡消費税が6月3日の社会保障制度改革国民会議で真顔で論議された。
提案者は委員の一人である伊藤元重東大教授である。
いつ頃具体化するかは分からんが……。

高齢者医療費をカバーする目的という大義名分となるのだろう。
相続税の基礎控除額以下でも課税することになる。
消費税の補完税というなら税率は消費税引上げ後の10%だ。

例えば相続人が配偶者と子供二人の場合、相続税の基礎控除額は4,800万円(改正後)、遺産が4,000万円と仮定すると相続税はかからないが、死亡消費税が遺産額の10%、400万円かかってくるのだ。

国には15年間で100兆円超の税収が見込める。
相続税とは比較ならないほど多額の税収となる。
それに社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度が行き渡れば簡単に徴収できる。
マイナンバー制で財産は国がすべてお見通しだから、国が勝手に口座から引き落としてしまう。
諸君!私たちは死んでも税金から逃れることはできないのだ。
税金を払いたくなければ「稼がず、使わず、溜め込まず」で生きていくしかない。それとも消費しまくって借金だけ残して死んだら、消費税を還付してくれるのか?おい。

税理士さんはまた仕事が増えてビジネスチャンスですねぇ、だと?
「死亡消費税」のような仕事なんかしたかねぇわっ!
それどころかマイナンバー制が普及すれば、税理士の出る幕なんかどこにもねぇわっ!