税務署では7月から新たな事務年度が始まる。
7月の上旬には人事異動があるので、税務署員は6月末までにそれまでの税務調査の事案の処理に区切りをつけようと必死になる。
だから、この時期、税務署員は「6月末までには何とかしてくれ」と泣きついてくることになる。
税理士になったばかりの頃、私は「何とかしてくれって、いったい何すんねん」とわけがわからなかった。
これはどういうことかというと、当初申告に問題点がある場合、修正申告に応じるよう、税理士から納税者を説得して修正申告書を提出させて欲しい、という意味なのだ。
しかし、納税者が税務署の指摘に納得していないのなら修正申告に応じるように説得してはならない。
とにかく税務署員の中には、税理士は税務署に協力して納税者を説得することが当たり前だと勘違いしている連中がいる。
つまり、税務署の仕事を手伝うのが税理士の仕事だと思っているのだ。
税理士は税務署の手先ではない。
「早く何とかしてくれと言われても、今まで放ったらかしにしていたのはお前たちではないか!自分の都合ばかり押し付けるな、ボケッ!」と心の中でツッコミを入れる(若い頃は口に出していたが、今では温厚になったので心の中で呟くことにしている)。
うちの事務所では昨年からの相続税の税務調査で、その結論が長引いて未だに片付かないでいる事案がある。
税務署が問題点を指摘してきたのだが、その内容はまるで理由にならない言いがかりなのだ。
納税者が修正申告に応じてくれれば儲けもの、ぐらいの思いで吹っかけてくるようなケースもあるのだ。
うちの事務所の提出する申告書に間違いはない。
問題があると言うのなら、淡々と「更正」(税金を追徴するという行政処分)をしてくればよいではないか。
出る所へ出て決着をつけようじゃないか、と、うちの事務所では覚悟を決めているのだ。
だいたい、何でもかんでも修正申告で幕引きにしようとする税務署の態度が問題なのだ。
納税者も税務署の指摘に納得がいかなければ、修正申告に応じてはならない。
修正申告に応じれば納税者は自らの間違いを認めたということになるので、その後、不服申立をするチャンスを放棄してしまうことになる。
税務署は後腐れのない修正申告で終わりにしたいのだ。
長いものには巻かれろと税務署の言いなりになる納税者が多いために、日本の税務行政はいつまで経っても後進国並みである。
こうなったのも納税者に問題がある。
ところで今年から税金を追徴するような処分にはすべて理由付記しなければいけないことになった。
相続税の更正の場合、どのような理由付記になるのか興味があるので、是非読んでみたいと思っている。
役人に共通して言えることは他人の作成した書類にケチをつけるのは得意だが、自分の作った書類を点検されるのをひどく嫌う。
だから、理由付記でぴたりと筆が止まったまま何も書けないのだ。
それが今の税務調査後の事務の停滞に現れているのだ。
相続税の基礎控除の引き下げで今後、申告件数が倍増しそうなのに、そんな調子で大丈夫か?おいっ!