ある相続税の税務調査での話。
かなり多額な遺産を残された相続事案の申告だった。
税務調査で長い期間をかけたにもかかわらず、否認項目が出て来ない。
このまま何事もなく「申告是認」で終わるはずだったのだが、税務署の担当者が ねちこい奴で、「これだけ時間をかけたのに何にもなしで済ますわけにはいかん」 と思ったのか、やけくそで広大地評価 の否認を持ち出してきた。
広大地評価はいま相続税申告ではもっとも税務署とトラブルが多いところだ。
だから申告前から広大地評価について不動産鑑定士さんの意見書や開発想定図面を添付し、納税者にも事前にトラブルの可能性と税務否認された場合の追徴 税額等を懇々と説明していた(だから想定 内のことではあったのだが……)。
税務署は案の定、広大地評価という白黒はっきりしないところで否認して来たわけだ。
広大地評価が認められればその評価減額は多額になり相続税もグンと安くなる。
逆にこれがひっくり返れば数千万円単位で追徴される。
まるで博打だ。
今回の広大地評価の否認は、もし納税者が修正申告に応じればもうけものというような、ふっかけ(ぼったくり)の雰囲気 がした。
当然、こちらは修正申告には応じないと拒絶した。
が、しかし、まさかとは 思ったが、税務署はしゃあしゃあと更正(追 徴)処分をして来たのだ。
税務署の暴走 (国家によるボッタクリ)だ。
アホな担当官の暴走を食い止めるシステムがないのか?
おいっ!どないなっとん ねん!
当然、納税者の方と相談のうえ、「負けてたまるか、やったろやないか」と いうことになった。
戦いが始まったのだ。
異議申し立てを経て、国税不服審判所 に審査請求をした。
ここで当方が主張したのは
①広大地評価 が正当であるという主張とともに
②予備的主張として「理由付記の不備により更正処分は失当」と主張したのだ。
これがダメならあれ、あれがダメならそれと主張はいくつしてもよいからだ。
広大地評価をすることが正当だとの主張だけでも勝てると思っていたが、結局、今 回の件で決め手になったのは、なんと「理由付記の不備」により更正処分は失 当との当方の主張が認められたのだ。
「理由付記」については平成23年税制改 正で「国税通則法」が改正され、納税者に不利な処分をする場合にはその理由を付記しなければならないことが決まったのだ。
平成25年1月1日から施行されている。いいタイミングで改正されたので早速使わせてもらったわけよ(あははは)。
まだ国税不服審判所で闘っている最中なのに税務署から「理由付記の不備」を認めるから更正処分はなかったことにしてくれとの電話が入った。
勝ったのだ。
「ざまぁ見さらせ、あほんだら」と心の中でつぶやいた。
しかしなぁ、納税者のところへ届いた書類は「減額更正通知書」という紙切れ一枚だけだったのだ。
「すみませんでした」の謝罪の一言もないのだ。
これでまた納税者が怒った。
「愚弄するのもええかげんに せ~よ」と言いたい気分だと思う。
そのとおり!
さあ、これからどうする。