死ぬまで働くのが幸せだ

私が資産税(相続税・贈与税や譲渡税などの税金)を専業とするようになってから28年になる。
資産税というのは恐ろしい税金でちょっとしたミスでも数千万円の追徴を食らってしまう可能性のある税金だ(本当は資産税に限らないのだが)。
お客さんに迷惑をかければ損害賠償で即廃業ということもあり得る。
私も取り返しのつかないほどの税額ではなかったが何度か弁償したことはある。
弁償したからこそ力がついたとも言える。
“百人殺して名医”というが失敗をしなければ実力はつかない。
“板子一枚下は地獄の世界”だ。
それに常時仕事にありつけるわけでもない不安定な仕事である。
ある程度覚悟の上の選択だったが、さすがに10数年間は食うや食わずの状態が続いた。
資金繰りの苦労は嫌というほど味わった。
私のような注意力散漫な人間が、無事にこの仕事を続けて来られたことが奇跡だ。この仕事は自分には向いていないのではないか。
何度思ったことか。

しかし、それでも税理士を30年も勤めていると、ど~ゆ~わけか仕事が面白くなってきた。
そしてなぜか無性に勉強したくなった。
「いまごろなに言(ゆ)~とんねん、遅いわ」と
言われそうだが学習意欲が湧いて来た。
私は奥手なのだ。

よぉ~し、こうなったら、仕事を道楽にできるぞ。
好きなことをして世間のお役に立ちながら、お金がもらえる。
こんな幸せは他にない。
人生80年と考えたら60歳からの20年間をどう生きるかだ。
死ぬまで働ければそれがどんなに幸せなことか。

働けなくなったらどうしよう、病気になったらどうしようという恐怖から財産を溜め込んでしまう。
いくら財産を溜め込んでも安心はできない。
死ぬまで元気に働けるのであれば財産はいらない。
なにより健康に税金はかからない。

ワシら自営業者は老後の趣味をわざわざ探す必要はない。
仕事そのものを道楽にしてしまえばよいからだ。
そうすれば死ぬまで道楽できる。
国民年金が少ないと嘆くことはない。
少ないからこそ老後も働くしかないのだ。
だから死ぬまで元気に働けるというものだ。

自営業者で老後の生活が安定するだけの財産を蓄えている人はほとんどいない。
真面目に仕事をやって来たにもかかわらず、みな借金まるけで終わるのだ。
かと言ってたっぷり財産を残して死んでいく人とどちらが幸せかというと何とも言えない。