身も蓋もない話

来年以降に亡くなった場合、相続税はいくらくらいになるか試算していただけませんか?
という相談が増えてきている。
次年からの相続税の基礎控除の引き下げのプレッシャーは想像以上だ。
基礎控除額の大幅な引き下げで「相続税はかかりませんでした」と言うのが恥ずかしくなるような状況だ。
相続税も大衆課税となる。
株式や不動産というフィクション(虚構)に税金をかけ、キャッシュ(現金)を奪い取っていくのだから、まさに「民の生き血を吸う税金」だ。

相続税は分かりにくい。
第一、自分の財産がどのくらいの額になるのか分かっている人はいない。
相続税の仕組みもご存じない。
それより何より、いつ死ぬか分からないからどうしようもない。
相続税がいくらくらいになりそうか見当がつかない人ばかりだ。
だから不安に煽られてやらなくてもよい節税対策をやらされる羽目になる。
こういうことにならないためにも現状認識は必要だ。
しかし、精密計算は意味がない。
ざっくりでよい。
どうせ税制はコロコロ変わるし、財産内容も変化する。
精密計算をすることがナンセンスなのだ。
現状でいくらくらいの相続税になりそうかが分かれば、ほとんどの人が安心される。
なぜなら10人中8、9人までが「その程度の税金で済むんですかぁ、何とかなりそうで安心しましたぁ」
で終わるのだ。

これでは商売にならないが、それでよい。
「何もしない」というのも重要な選択肢のひとつだ。
「何もしなければ大変なことになりますよぉ~」
という脅しから身を守るためにも現状認識はしておいた方がよい。
ところで、最近の相談者は、各地で税制セミナーを聴きまくり、節税本を読みあさり、ネットで検索しまくっているので、頭の中がゴミのような情報でぐちゃぐちゃになって、ストレスの溜まっている人が多くなった。
「いまから節税対策を立てておくべきです」
などと急き立てられて、商売の餌食にされているだけだ。
そんなものは受け流して、流れに身を任せておればよい。
なるようになる。
ちっぽけな頭で考えても何ともならない。
どうしても税金を払うのが嫌なら、すべて使い切って死んで行けば
よいのだ。

もともとこの世に自分の財産というものはない。
自分の財産を守る、という錯覚から目を覚まさないといつまで経っ
ても節税対策という余計なことにかかづらうことになる。
もともと守るものなど何もないのだ。
「あなたの大切な財産を守りましょう」
などともっともらしいことを言っているが、互いに催眠術をかけ
あっているだけだ。