うちの次男は大道芸人をやっている。
ゴールデンウィークの最中は稼ぎ時だ。
そこで何を思ったか関東へ出稼ぎに行くというので、飼っていたモルモットを一時、預かって欲しいと餌付きで持ってきた。
モルモットはちょこまか動いてクークー鳴くが、大してうるさくもないし、時々餌をやるだけなので面倒はない。
糞も臭くないので部屋の中で飼っても苦にならない。
名前は「サーちゃん」だって。
なんでか知らんけど。
夫婦二人で暮らしているところにやってきたサーちゃんはうちのカミさんのいい友達になった。
ところでこのサーちゃん、よく食うし、よく糞をするのだ。
餌はパスチャーチモシーという干し草だ。
袋にいっぱいの干し草があっと言う間になくなってしまう。
それにしてもサーちゃん、朝から晩まで干し草ばかり食べておる。
干し草のどこに栄養はあるのだろう。
タンパク質や炭水化物は摂らなくてよいのか?
バランスの悪い食生活をしておると長生きできんぞ、おい!
時々、ニンジンやレタスを食すが、干し草が一番の好物みたいだ。
それより何より、いったい干し草のどこが美味いのだ!
夢中で食っているサーちゃんを見ながらそう思った。
タンパク質や炭水化物を摂らずに、どうしてそんなに元気にしていられるのだろう。
枯れ草にカロリーはあるのか?
サーちゃんを見ながら、なぜそんなことを考えたかと言うと、ちょうど夏井睦医師の「炭水化物が人類を滅ぼす」という本を読んでいたからだ。
炭水化物を摂る度に血糖が上がる。
これがいけないらしい。
血糖は人体に害がある。
だから血糖を上げない食事をする。
ただこれだけだ。
いま話題の糖質制限の本だ。
炭水化物といえば、ご飯、パン、うどん、ラーメン、お好み焼き等々、うまいもんばかりだ。
しかし炭水化物は嗜好品で中毒性があるという。
そういえば私は独身の頃、インスタントラーメン中毒に冒されていた。
一日三食、一日も休まず、三ヶ月間食い続けて、体がだるくなって医者に診てもらったら肝臓がやられていた。
しかし、それは炭水化物のせいではなく油が悪かったのかも知れないが……。
ま、そんなことは昔のことだ、どうでもよい。
健康のための決まり文句は「バランスの良い食事」と「適度な運動」だ。
しかし、人間以外でバランスのよい食事を摂っている動物がいるだろうか。
牛は草ばかりライオンは肉ばかり食って、元気にしてるじゃないか。
タンパク質も摂らねば、カルシウムやビタミン、ミネラルも摂らねば、惚けないためにはDHAやEPAも必要ならば青魚を食いまくらねばならぬ。
そんなことをしていたら食い過ぎで病気になってしまうだろ。
所詮、バランスのとれた食事などできはしないのだ。
サーちゃんを見てみろ、食事のバランスなど考えもせず、夢中になって枯れ草を食っているではないか。
栄養分が足りなきゃ、自分の体の中で作り出す。
余れば体から排泄する。
バランスを保つのはちっぽけな頭で考えなくても大自然に任せればよい。
こう考えれば糖質制限もよいが、それより断食の方が遥かに効き目があると思うよ。
何も食べなくても天に任せておけばよいという次元の違う心境になれるのが何よりの功徳なのだ。