iPhone6 plus

アップルがiPhoneの新製品を発表した。
以前の私なら新製品と聞いただけで何も考えずに食らいついた。
ダボハゼみたいに。
アップルにはたくさん貢いだことだよ。
しかし、いまの私は違う。
ジョブズ亡き後、新製品の発表にもワクワク感がなくなり、じっくり様子を見て、使った人たちの評判をネット上で確認してから買うようにしている。年を食ったのだ。
iPhone6はともかく、iPhone6 plusはいくらなんでもないだろ。
ネットで見る限り、でかい、でかすぎ。
何を考えとんねん!

iPhone6plusは早々と私の選択肢から消えた。
いまの私にはスマホは必須アイテムで、これがなければ夜も日も明けない。私が死んで棺桶に入ったら、そこにスマホも一緒に入れて欲しいほどだ。
そんなスマホ依存症の私が、いったい何に使っているのかと聞かれれば、電話とメール以外は何にでも使っていると答える(ただし、ゲームはやらないが)。
私は電話とメールが嫌いなのでスマホにその機能がついていなくてもよいとさえ思っているくらいだ。
それなら何もスマホでなくてもいいのにね(笑)。

機能的でデザインのよい機器に私は惚れ込んでしまう。
持っているだけでインスパイアされてしまうのだ。
おかげで仕事もやる気になるので決して高い買物ではない。
いまの自分の仕事上での使用機器はiPhone5とMacBook AirとiMacの組み合わせで使っている。
充分満足して使っているので買い替える必要はないが、新製品に食いつかないというのも落ち着かない。
こころがざわつくのであるよ。

気を鎮めるために実機を触ってみねばなるまい、ちゅうわけで名古屋栄のアップルストアに行った。
iPhone6とiPhone6 plusのまわりはさすがに人だかり、でも、じっくり見たよ。
「ん!iPhone6 plusの大きさ、許せるやん」
これならワイシャツの胸ポケットにスッポリ。
上部ははみ出ても横幅はピッタシ。
それに薄いし、これに決定!
ズボンの尻ポケットに入れていてiPhone6plusが曲がってしまったというニュースが流れたが、「アホか、こんなもの尻ポケットに入れる奴が悪いやろ」
私は今年から車を手放してどこにでも公共交通機関か徒歩で移動しているので、荷物は最少限にしたい。
できるなら胸ポケットにiPhone6 plusだけを忍ばせ、手ぶらであちらこちらに出かけたいのだ。

iPhone6 plusの薄さと軽さと画面の大きさならそれが可能になるかも知れない。
ひと昔まえのように計算機や法令集・参考書などをカバンの中に詰め込んで、ヒィヒィ言いながら移動していたのがウソみたいだ。
iPhone6 plusで私はまた仕事をやる気になって来た。
ワクワクしてくる。
インスパイアされちゃっているのだよ。

身も蓋もない話

来年以降に亡くなった場合、相続税はいくらくらいになるか試算していただけませんか?
という相談が増えてきている。
次年からの相続税の基礎控除の引き下げのプレッシャーは想像以上だ。
基礎控除額の大幅な引き下げで「相続税はかかりませんでした」と言うのが恥ずかしくなるような状況だ。
相続税も大衆課税となる。
株式や不動産というフィクション(虚構)に税金をかけ、キャッシュ(現金)を奪い取っていくのだから、まさに「民の生き血を吸う税金」だ。

相続税は分かりにくい。
第一、自分の財産がどのくらいの額になるのか分かっている人はいない。
相続税の仕組みもご存じない。
それより何より、いつ死ぬか分からないからどうしようもない。
相続税がいくらくらいになりそうか見当がつかない人ばかりだ。
だから不安に煽られてやらなくてもよい節税対策をやらされる羽目になる。
こういうことにならないためにも現状認識は必要だ。
しかし、精密計算は意味がない。
ざっくりでよい。
どうせ税制はコロコロ変わるし、財産内容も変化する。
精密計算をすることがナンセンスなのだ。
現状でいくらくらいの相続税になりそうかが分かれば、ほとんどの人が安心される。
なぜなら10人中8、9人までが「その程度の税金で済むんですかぁ、何とかなりそうで安心しましたぁ」
で終わるのだ。

これでは商売にならないが、それでよい。
「何もしない」というのも重要な選択肢のひとつだ。
「何もしなければ大変なことになりますよぉ~」
という脅しから身を守るためにも現状認識はしておいた方がよい。
ところで、最近の相談者は、各地で税制セミナーを聴きまくり、節税本を読みあさり、ネットで検索しまくっているので、頭の中がゴミのような情報でぐちゃぐちゃになって、ストレスの溜まっている人が多くなった。
「いまから節税対策を立てておくべきです」
などと急き立てられて、商売の餌食にされているだけだ。
そんなものは受け流して、流れに身を任せておればよい。
なるようになる。
ちっぽけな頭で考えても何ともならない。
どうしても税金を払うのが嫌なら、すべて使い切って死んで行けば
よいのだ。

もともとこの世に自分の財産というものはない。
自分の財産を守る、という錯覚から目を覚まさないといつまで経っ
ても節税対策という余計なことにかかづらうことになる。
もともと守るものなど何もないのだ。
「あなたの大切な財産を守りましょう」
などともっともらしいことを言っているが、互いに催眠術をかけ
あっているだけだ。

勤続30年

先月、税理士会から勤続30年の表彰をするから出席しないかと葉書が来た。
開業してからもう30年になるのかぁ、私は税理士会の会合にはほとんど出席した
ことがない。
自他ともに認める税理士界の“はぐれ鳥”だ。
「たまには会合に出て来い」という警告書をもらった。
不良会員のこの俺を表彰だと?
会場は帝国ホテル、記念品も出るらしい。
「そ~か、帝国ホテルちゅうとこに行ってこましたろやないか。
どんな記念品が出るかも楽しみだし……」
それにこの私が表彰されることなど後にも先にも今回だけだ、ということで初めて会合に出席した。

税理士会の総会は決算報告やら予算案の報告などでちっとも面白くなかった。
表彰式は誰か知らん税理士が代表で表彰状を受け取り、あとは「以下、同文!」で
終わった。
私はその他大勢の中に埋没して表彰式は終了した。
なんせ1400人以上も表彰を受ける税理士がおったのだから、しゃあないわなぁ~。
記念品って、なんやろ。
夫婦ペアでハワイ旅行?
などと期待していたのだが、はっきり言ってショボかった。
チープな万年筆とボールペンセットだった。

ま、そんなことはともかく、同輩の税理士たちと、
「こんなストレスの多い仕事をしながら、よくもくたばらずに30年間も続けて来られたものだなぁ」
などとねぎらい合った。
30年も続けることができたということは、すなわちそれが天職ということだ。
私は若い頃、上司と喧嘩ばかりして辞表を叩き付け、10数回も転職を繰り返した。
私は社会の落伍者だった。
路上生活も覚悟せねばあかん。
その頃の私の人生設計の最終局面は“野垂れ死に”だった。
誰に看取られることもなく、ひっそりと死んで行こう、それもまたよし、と思っていたのだ。
まさか私のような短気で飽きっぽく社会に順応できない者が、30年も同じ仕事を
続けるとは思いもよらなかった。
独立開業した後も職業選択を誤ったと思っていたくらいなのだから。

それが最近、ど~ゆ~わけか仕事が面白くなってきた。
こうなったら仕事を道楽にしてこましたろ、寸暇を惜しんで勉強してこましたろ、こましてこましてこましまくったろ、と思っている今日この頃なのだ。
考えてみれば仕事が道楽になる、というのが人生で一番幸せなことかも知れない。昨年まで10年間も週休三日で楽をしたせいで、いままで頑張らなかった分、たっぷり余力が残っている。
それにわずかな国民年金ではとても食ってはいけないし、私は貧乏だから死ぬまで働くしかない。
図らずも何もかもが「死ぬまで働け」と仕向けられている。
これは天のシナリオか?
覚悟は決まった。

相続税の課税割合

■上位の都道府県
1位 東京9.08%
2位 愛知7.91%
3位 神奈川6.73%
4位 埼玉5.56%
5位 静岡5.17% 

■下位の都道府県
43位 岩手1.55%
44位 大分1.51%
45位 青森1.41%
46位 長崎1.37%
47位 秋田1.07%

これ何の数字か分かりますか。
平成24年分の相続税の課税割合(亡くなった人のうち相続税が課税される財産を残した人の割合)だ。
わが愛知県は意外に高い。
ちなみに大阪はどこやねん、と探してみると8位で4.68%と意外と低いのだ(京都や奈良よりも大阪の方が低いというのが不思議だ。ちゃんと申告しとるんかいな)

相続税の基礎控除の引き下げの影響で課税割合が4%から7%程度になると言われており、相続税を心配する人たちには、この数字は結構浸透している。
「増税増税と騒いでいるが、100人中7人程度かぁ。
たいしたこたぁないなぁ~」と思っている人が多い。
しかしなぁ、上の表のように地方の県では1%台のところが多いのだ(13県もある)。
そういうものも一緒くたにしての4%とか7%と言っておるのだ。
味噌も糞も一緒にしたらあかんやろ!

4%から7%程度に上昇するというのは、ショックを和らげるためのまやかしだ。
愛知県ではそんな程度ですむわけはない。
「数字は嘘はつかない、しかし、嘘をつく者は数字を使う」

というのは本当だ。

だいたい来年から相続税の基礎控除額を超えそうな人たち(相続税課税対象予備軍)は、愛知県では20%や30%に上昇してもおかしくないと思う。
来年から引き下げられる相続税の基礎控除額を超える程度の財産額を保有している人たちは、特に愛知県では多いと思う。

こういうケースでは相続税がかかっても数十万円かせいぜい数百万円程度で済む。決して相続税をゼロにしようなどと欲をかいてはダメだ。
節税というのは麻薬みたいなもので、税金をゼロにするまでは気が済まなくなるのだ。
節税対策で借金してアパートを建てるなど愚の骨頂だ。
節税額の何倍もの利息を払うことになる。
生前贈与も子供や孫の金銭感覚を狂わせるだけだ。
払えるものなら払えばよい。
税務署は命まではもって行かない。

号泣する納税者

「お父さん、お父さん、ちょっと来て。 テレビで面白いものやってるよ」
とうちのカミさんに誘われて、その映像を見た。
あの号泣議員の会見だ。
うちのカミさんは腹を抱えて笑っている。
笑いすぎて涙まで 出しておる。
「なんじゃこりゃ~、こいつ天然か?」
う~む、日本中を笑いに包むすごい奴。
衝撃のデビューだな。

机をたたいて号泣する姿を見ながら、私は、昔の、ある税務調査のことを思い出していた。
私が、会計事務所で修行をしているときのこと。
先輩の担当する会社に税務 調査が入ることになった。
私はそれまで税 務調査を経験したことがなかったので、先 輩に頼んで見学させてもらうことにした。
税務調査というのはどんなものか。
納税者と税務署との攻防はどんな様子なのだろうか、と興味津々で、そして密かに修羅場を期待しながら先輩について行った。

ところが税務調査は淡々と進んでいき、 期待していた修羅場が訪れない。
しかし、 売上げの計上漏れや仕事に関係のない家族 での食事代などが計上されており、申告の中身はボロボロなのだ。
社長の奥さんが 経理を担当しており、税務署員の質問は奥さんに集中することになった。
午後3時頃になると疲れも出て来て、私はあくびをかみ殺しながら退屈していた。
そのとき突然、奥さんが机をたたき始めた のだ。
「なんで私ばっかり、わぁ~わ わわ、いじめな、わぁ~わわわ、い かんのぉ~。わぁ~わわわ、みんな、 わぁ~わわわ、やっとるがね~、 わぁ~わわわ」
と名古屋弁丸出しでわめき始めたのだ。

そのうち、コーフンも最高潮に達して、 堰を切ったように次から次へと税務署に対 する恨みつらみを吐き出し、最後には何を言いたいのかさっぱり分からない状況になっ て来た。
「まあまあ、奥さん落ち着いて」
となだめることもせず様子を見ていた。
そうこうするうちに異様な雰囲気のなかに小学校低学年の子供さん二人が学校 から帰って来た。
見知らぬ男たちにいじめられていると思ったのだろう。
子供たちもお母さんに抱きつきわんわん泣き出し、 収拾がつかなくなった。
修羅場だ。
ご主人である社長はオロオロしているばかりだ。

税務署員(3人)はひそひそと話し合い
「今日のところは一旦引き上 げます」
と言って帰って行った。
あっけにとられたのは税務署員が帰って行った後だ。
奥さんは何事もなかったようにケロっとしている。
あの騒ぎは何だったのだろう。
その後、どうなったかって? あのまま調査終了だよ。
で、税金は? 追徴されなかったよ。
あの当時、「え、あれで終わり?」みた いに、調査が尻切れで終わることなどしょっちゅうあったのだ。
涙ひと粒百万円の価 値があったということだ。
諸君!言っておくが、いまどき号泣作戦は通用しない。
しかし、税務署員の気勢を削ぐ効果はあると思うよ。
「もうこれ以上、わぁ~わわわ、 払うお金が、わぁ~わわわ、ないん ですぅ~。わぁ~わわわ、なんで私 ばかり、わぁ~わわわ、いじめるん ですかぁ~、わぁ~わわわ」
と机をたたきながら号泣してみるか?

理由付記

平成23年度税制改正で納税環境の整備ということで国税通則法が改正された。
なかでも実務で影響が出てきそうなのが「理由付記」である。
平成25年1月1日から施行されている。
納税者に不利益な処分をする場合には、税務署はその理由を付記しなければならなくなっ た。

今までそんな規定はなかったの?
とびっくりされた方もおられるかも知れない。
行政手続法にはもともとこういう規定があったらしい。
これを税務上も法定化したのだ。

税務調査を受け、その結果、申告に誤りがあれば「修正申告に応じたらどうや」と税務署 から納税者に勧める(これを修正申告の慫慂(ショウヨウ)という)。
そしてほとんどの納税者 が「しゃ~ないなぁ」と、それに従っていた。
納税者が税務署の指摘に納得すればそれでよいのだが、実際は納税者が納得していないにもかかわらず、修正申告するようにプレッシャーをかけてくる。
なぜなら、納税者から修正申告が出てくれば税務署としては後腐れ(後から不服申立や訴訟などを受けること)がなく終わるので、税務署は執拗に修正申告を迫るのだ。
それどころか修正申告に応じるように納税者を説得するのが税理士の仕事だと勘違いしている税務職員すらいる。

諸君!納得できなければ修正申告に応じてはならない。
特にこれからは理由付記が制度化 されたことにより、なぜ、追徴されなければならないのか、納得できるまで文書で説明してくれと言えばよいのだ。
税務署から更正(追徴)処分を受けることになれば、必ず理由付記が なされるはずだから、その理由を熟読して更正処分を受ければよい。
更正処分を受けた後、 素直に税金を払ってもよし、争ってもよし、である。
修正申告に応じても何のご褒美もない。
税務署と争うばかりが能ではないが、何も税務署の言いなりになることはないのだ。

税金は税法という法律を根拠に納税者の懐に手を突っ込んで国民から金を収奪するものだが、税法には国から納税者を守る役目もあるのだ。
理由付記が制度化されたことにより税務署員はやりにくくなったことだろう。
役人は他人の書いた書類にケチをつけるのは得意だが、 自分の書いた書類をチェックされるのをとても嫌がる。
だから理由付記の文書を書くとき筆 が進まず、業務が停滞する。
それが理由で最近は税務調査が激減している。

税金は法律に基づかなければ課税も徴収もできない。
これを「租税法律主義」というのだが、税金の世界では、法律にがんじがらめになっているのは実は納税者の方ではなく、税務職員の方なのだ。
納税者もチマチマした節税対策に頭を絞るより、租税法律主義という考え方に馴染んだ方がよい。
税務職員に対して可哀想に、という憐憫の情を抱いてあげれば、「お 勤め、ごくろうさん、頑張れよ」と声をかける余裕もできる。
そう考えれば、税務調査など 怖くも何ともないのだ。

ぼったくるにも理由がいる

ある相続税の税務調査での話。
かなり多額な遺産を残された相続事案の申告だった。
税務調査で長い期間をかけたにもかかわらず、否認項目が出て来ない。
このまま何事もなく「申告是認」で終わるはずだったのだが、税務署の担当者が ねちこい奴で、「これだけ時間をかけたのに何にもなしで済ますわけにはいかん」 と思ったのか、やけくそで広大地評価 の否認を持ち出してきた。

広大地評価はいま相続税申告ではもっとも税務署とトラブルが多いところだ。
だから申告前から広大地評価について不動産鑑定士さんの意見書や開発想定図面を添付し、納税者にも事前にトラブルの可能性と税務否認された場合の追徴 税額等を懇々と説明していた(だから想定 内のことではあったのだが……)。
税務署は案の定、広大地評価という白黒はっきりしないところで否認して来たわけだ。
広大地評価が認められればその評価減額は多額になり相続税もグンと安くなる。
逆にこれがひっくり返れば数千万円単位で追徴される。
まるで博打だ。

今回の広大地評価の否認は、もし納税者が修正申告に応じればもうけものというような、ふっかけ(ぼったくり)の雰囲気 がした。
当然、こちらは修正申告には応じないと拒絶した。
が、しかし、まさかとは 思ったが、税務署はしゃあしゃあと更正(追 徴)処分をして来たのだ。
税務署の暴走 (国家によるボッタクリ)だ。
アホな担当官の暴走を食い止めるシステムがないのか?
おいっ!どないなっとん ねん!
当然、納税者の方と相談のうえ、「負けてたまるか、やったろやないか」と いうことになった。
戦いが始まったのだ。

異議申し立てを経て、国税不服審判所 に審査請求をした。
ここで当方が主張したのは
①広大地評価 が正当であるという主張とともに
②予備的主張として「理由付記の不備により更正処分は失当」と主張したのだ。
これがダメならあれ、あれがダメならそれと主張はいくつしてもよいからだ。
広大地評価をすることが正当だとの主張だけでも勝てると思っていたが、結局、今 回の件で決め手になったのは、なんと「理由付記の不備」により更正処分は失 当との当方の主張が認められたのだ。

「理由付記」については平成23年税制改 正で「国税通則法」が改正され、納税者に不利な処分をする場合にはその理由を付記しなければならないことが決まったのだ。
平成25年1月1日から施行されている。いいタイミングで改正されたので早速使わせてもらったわけよ(あははは)。
まだ国税不服審判所で闘っている最中なのに税務署から「理由付記の不備」を認めるから更正処分はなかったことにしてくれとの電話が入った。
勝ったのだ。

「ざまぁ見さらせ、あほんだら」と心の中でつぶやいた。
しかしなぁ、納税者のところへ届いた書類は「減額更正通知書」という紙切れ一枚だけだったのだ。
「すみませんでした」の謝罪の一言もないのだ。
これでまた納税者が怒った。
「愚弄するのもええかげんに せ~よ」と言いたい気分だと思う。
そのとおり!
さあ、これからどうする。

バランスの良い食事って?

うちの次男は大道芸人をやっている。
ゴールデンウィークの最中は稼ぎ時だ。
そこで何を思ったか関東へ出稼ぎに行くというので、飼っていたモルモットを一時、預かって欲しいと餌付きで持ってきた。
モルモットはちょこまか動いてクークー鳴くが、大してうるさくもないし、時々餌をやるだけなので面倒はない。
糞も臭くないので部屋の中で飼っても苦にならない。
名前は「サーちゃん」だって。
なんでか知らんけど。
夫婦二人で暮らしているところにやってきたサーちゃんはうちのカミさんのいい友達になった。
ところでこのサーちゃん、よく食うし、よく糞をするのだ。
餌はパスチャーチモシーという干し草だ。
袋にいっぱいの干し草があっと言う間になくなってしまう。

それにしてもサーちゃん、朝から晩まで干し草ばかり食べておる。
干し草のどこに栄養はあるのだろう。
タンパク質や炭水化物は摂らなくてよいのか?
バランスの悪い食生活をしておると長生きできんぞ、おい!

時々、ニンジンやレタスを食すが、干し草が一番の好物みたいだ。
それより何より、いったい干し草のどこが美味いのだ!
夢中で食っているサーちゃんを見ながらそう思った。
タンパク質や炭水化物を摂らずに、どうしてそんなに元気にしていられるのだろう。
枯れ草にカロリーはあるのか?

サーちゃんを見ながら、なぜそんなことを考えたかと言うと、ちょうど夏井睦医師の「炭水化物が人類を滅ぼす」という本を読んでいたからだ。
炭水化物を摂る度に血糖が上がる。
これがいけないらしい。
血糖は人体に害がある。
だから血糖を上げない食事をする。
ただこれだけだ。
いま話題の糖質制限の本だ。

炭水化物といえば、ご飯、パン、うどん、ラーメン、お好み焼き等々、うまいもんばかりだ。
しかし炭水化物は嗜好品で中毒性があるという。
そういえば私は独身の頃、インスタントラーメン中毒に冒されていた。
一日三食、一日も休まず、三ヶ月間食い続けて、体がだるくなって医者に診てもらったら肝臓がやられていた。
しかし、それは炭水化物のせいではなく油が悪かったのかも知れないが……。
ま、そんなことは昔のことだ、どうでもよい。

健康のための決まり文句は「バランスの良い食事」と「適度な運動」だ。

しかし、人間以外でバランスのよい食事を摂っている動物がいるだろうか。
牛は草ばかりライオンは肉ばかり食って、元気にしてるじゃないか。
タンパク質も摂らねば、カルシウムやビタミン、ミネラルも摂らねば、惚けないためにはDHAやEPAも必要ならば青魚を食いまくらねばならぬ。
そんなことをしていたら食い過ぎで病気になってしまうだろ。

所詮、バランスのとれた食事などできはしないのだ。

サーちゃんを見てみろ、食事のバランスなど考えもせず、夢中になって枯れ草を食っているではないか。
栄養分が足りなきゃ、自分の体の中で作り出す。
余れば体から排泄する。
バランスを保つのはちっぽけな頭で考えなくても大自然に任せればよい。
こう考えれば糖質制限もよいが、それより断食の方が遥かに効き目があると思うよ。
何も食べなくても天に任せておけばよいという次元の違う心境になれるのが何よりの功徳なのだ。

相続税の税務調査の現場は奥さんの独壇場

相続税の税務調査を何度も受けたことがあるというベテランの納税者はいない。
生まれて初めて税務調査を受ける人がほとんどだ。
だから、実際に臨宅調査(自宅に税務署員が来て 調査をすること)となれば皆さん緊張される。
当然のことだ。

しかし、最近の税務署員はとてもフレンドリーな者が多く威圧感がまるでない。
そして皆、一様に雑談好きだ。
たまたま話が断食やマラソンの話になるとしっかり食いついて来る。
いつまでも食いついて来るので、こうなったら本来の調査をする時間を短くしてやれ、という魂胆で、こちらもいつまでも話し続けていると、結局は終了時間が遅くなるだけなのだ。
だから最近はこちらから雑談を持ちかけるのはやめにした。
結局、彼らは雑談しながらでも手を休めないという芸当(マルチタスク)ができないのだ。

相続税の調査は午前中は被相続人(亡くなった方)の経歴や趣味、人となり、などの聞き取りから始まり、一族郎党の名前、職業なども聞いてくる。
このとき頼りになるのが、相続人である長男の奥さんとか、亡くなったご主人の奥さんとか、いずれにしても女の人だ。
親戚の名前や職業などスラスラ答えられる男はまずいない。
ここらは女性の独壇場だ。
それにしてもよくご存知だ。
苦労して覚えるのではなく自然に頭に入っているのだろう。

それと家庭内でのお金の管理をしていたのもやはり女の人だ。
男は何にも分からない。
○年×月の○○円の出金は何に使われましたか?という質問にも男は何も答えられない。
「さぁ~、何だったかなぁ。死んだ親父のやったことだからなぁ」と頼りない。
このとき奥さんが「ああ、分かった、あれよ。自宅の修繕をしたじゃない」と一発回答なのだ。
「領収証とかありますか?」
「ちょっと待ってて、いま持ってくるから」と次々に調査は進んでい く。
奥さんはルンルン気分で楽しそうだ。
う~む、この家は奥さんでもっているのだなぁ。

夫婦は旦那がぼぉ~っとしていると奥さんがしっかりしている。
こういう家庭が約8割だ。
反対に奥さんがぼぉ~っとしていると旦那がしっかりしている。
夫婦とはよくしたものだ。
両方ともしっかりしている家庭はまずない。
夫婦揃って、ぼぉ~っとしている家庭はたまに ある。
以前、家族全員がぼぉ~っとしているケースに当たったことがあるが、こういう家族には癒されるが、相続税の申告は大変だったよ。

読字障害(ディスレクシア)

ひょっとしたら私は読字障害(ディスレクシア)という病気ではないかと思うことがある。
読字障害というのは識字障害、難読症とも言う。
字を読んでも理解できないとか、字が絵に見えてしまうとか読み書きに苦労する病気だ。
欧米では10人に1人の割合である病気らし い。
日本では20人に1人ぐらいの割合ではないかと言われている。
左脳の働きに問題があるのだ。
有名な人物ではピカソやフォード、ディズニーらが読字障害だったらしい。

いま、あるお客さんの相続税の件で、国税不服審判所に審査請求をしている。そうすると税務署との間で答弁書や回答書など退屈な文書のやり取りをすることになるのだが、その税務署が出してくる文書が読めないのだ。何が書いてあるのかさっぱり分からん。
それでも無理して読むと数ページ読んだところで吐き気がしてくる。
いったいこの文書を書いた担当者の頭の中はどないなっとんねん!
一言で終わることなの に、わけの分からない文章をダラダラと書きやがって!
こんな駄文を読まされる身になってみろ!
馬鹿馬鹿しくて付き合ってられるか!
不服申立などしなけりゃよかったと後悔する。
私が最初に国税不服審判所に審査請求を出したのは今から30年前だ。
そのとき審査請求書に添付した理由書はA4一枚の紙に箇条書きとともに◎や×、♡、△、→など図解して書いて出してやった。
自分では簡潔でとても分かりやすい文書だと自負していたのだが、国税不 服審判所の担当官はアホだったので「こんな理由書は受け付けられない」と怒りだしてしまっ た。
彼らにとってはダラダラとわけの分からない文章で書き連ねた理由書の方が馴染んでいるので楽なのだろう。
その時からこいつらとは付き合いきれないと思ったものだが、それは今でも変わらない。
読字障害の症状は小説などを読んでいるときは出ないのだが、請求書や督促状を見たときは発作的に起こる。
突発性読字障害だ。
また、税法の法令集を読むときにも読字障害の症状が出る。
「それでよく税理士の仕事が勤まりますねぇ」と言われそうだが「経験」と「勘」 と「度胸」で乗り切るのだ。
私は30年間、資産税の分野で仕事を続けてきたが大きな間違いもせずやって来れたのは「経験」と「勘」と「度胸」を働かせてやって来たからだ。人間、最後はアナログだよ。